私は現在、小児科、産業医を経て精神科の医師として単科の精神科病院にて勤務しております、水城稜と申します。
ここで書いていくのは、精神科の日当直バイトについてです。
精神科医になる前にバイトとして単科の精神科病院に日当直にアルバイトに行った際の話になります。
精神科医師の当直バイト、業務内容は
精神科の当直バイトは、原則的には病棟管理のみです。
精神科の病院でありながらあらゆる科のDr.にバイト募集をしている病院は「普段かかりつけの患者であっても、急な受診は引き受ける必要がない」病院です。
そのためバイト案件としても
- 病棟管理のみ
- ゆとり勤務
などと書いてあります。
そんな中で、精神科病院における独特の儀式的な対応があるので書いておきます。
それは
精神科は夜の病棟回診がある
という事です。
他科の先生からすると独特の業務ではないかと思います。
これは、精神科の医師が日中も全く行かなくて許されていた時代の名残だそうです。
1日に1回ぐらいはバイト医でも誰でもいいから「病棟に医師が回ったという事実」を用意する、という趣旨のもののようです(聞いた話ですが)。
その時間は、20時と決められている病院もありましたし、17時以降であれば何時でも構わないというバイト先もありました。
精神科医師の当直バイトはほぼ寝当直
精神科の病院であり基本的には健康状態に問題ない患者さんが多いため、夜間の対応は電話対応であることが多く、夜間に診察を頼まれるバイト先は稀です。
電子カルテでない病院では、翌朝の9時になる前にまた病棟を一回りして、夜間帯に出した指示を全てカルテに記載するバイト先もあります。
精神科でない医師を当直に雇っている場合は、「緊急の入院は受けない」と決まっていますし、夜間に診察を頼まれることも稀なので、よほどのことがない限りは寝当直です。
ただ最近は高齢者の患者さんも増えていて、伴って業務内容は拡大しています。
例えば
転倒によって裂傷ができてしまったので、縫合してほしい
という依頼は受けた事があります。
ですので、最低限縫合程度はできないと自分が困ることになります。
精神科特有?拘束回診と隔離回診
精神科特有かもしれませんが、夜の回診では拘束患者さんがいた場合「拘束回診」をする必要があります。
文字通り、拘束されている患者さんの回診を行います。
その場合のカルテの書き方など、お作法的な事に関してはバイト先医師のものを真似ておいたら問題ありません。
日直バイトであれば「拘束回診」に加えて「隔離回診」がプラスされます。
こちらも文字通り、隔離されている患者さんの回診を行います。
普段診ていない医師との話なので話し込まれることはありませんし、記載に関しては先ほどと同様に他の医師の記載を真似ておいたら大丈夫です。
精神科の患者は身体的には健康であることが多いので、急な発熱などで呼び出されることも稀です(インフルエンザの季節は除きます)。
精神科医師の当直バイト、相場(時給)は
精神科医師のバイトは
- 日直、当直それぞれで4〜6万円
- 日当直合わせて8〜12万円
が相場だと思います。
ほぼ寝当直の病院においてこの給与というのは美味しい部類だと思います。
精神科の患者さんに抵抗がなければ、稼ぐという意味では割りが良いと思います。
精神科医師の当直バイトにおける注意点
精神科の患者さんを見慣れていないと「緊急で暴れて隔離する時」などはビビると思います。
どんなに体が小さくても
本気で人間が暴れるとこうなるのか…
という事を身に染みて理解できます。
精神保健指定医が無い医師は、バイト前に確認を
精神保健指定医を持っていない場合は、隔離は12時間までで、拘束はできません。
逆算すると、夜間であれば21時以降にしか隔離はできないものと考えます。
精神保健指定医を持っていないけれども12時間以上病院に滞在する場合は、バイト先に「精神保健指定医のバックアップが可能か」を確認しておきましょう。
精神保健指定医のバックアップがないバイト先では、日中に隔離はできませんし、拘束もできません。
看護スタッフと青ざめるしかないタイミングが生まれてしまいますので、あまりオススメしません(その時に起こったことでも責任だけは問われるので)。
精神保健指定医を持っていない先生の場合は
いざという時は〇〇医師宛に電話をしてくれれば対応します
と言ってくれているバイト先を選んで、日当直を引き受けたほうがいいでしょう。
また「ローカルルール」が非常に多いのが精神科の特徴です。
事前の説明の時に、その「ローカルルール」を事前の説明の時に聞き出しておくのが、当日に快適に過ごすコツだと思います。
精神科医師のバイト、必要物品はコレ
精神科のバイトは基本的には暇で、必要物品は特にありません。
運が悪くてインフルエンザの季節に当たってしまったとかいうことがなければ、実働時間はトータル2時間程度。
24時間病院内に拘束される事にはなりますので、バイト先には自分が時間を潰せるものを持って行くと良いでしょう。
必要物品ではないが、暇つぶし道具は持って行こう
実働は2時間ですので、論文執筆や講演準備など、普段集中してできない仕事などを持ち込まれるのも良いでしょう。
PHSが鳴ることは想定しなくていいので、作業が捗りますよ。
建物が古い事が多い、ネット環境や生活用品の有無は要確認
ただし、建物やシステムが古いことが多いので
- Wi-Fiが飛んでいるかどうか
- 当直室にテレビがあるかどうか
- 浴室にシャンプーなどがあるか
などはバイト先に事前に確認しておきましょう。
せっかくPCを持ち込んだのに全く使えない事もあります。
シャワーを浴びようと思ったら、シャンプーが無いというバイト先も稀ですがあります。
精神科の病院は建物自体が古いことが多いので、シャワーなど入る予定の場合はシャンプーやリンスなどの生活用品は事前準備して持ち込むことをお勧めします。
他の暇つぶしの方法として、私は車でそのバイト先まで行ったので、ポータブルDVDプレイヤーを持ち込んでDVD鑑賞をしたことがあります。
DVDをレンタルして持ち込むのはとてもオススメです(今の時代で言えば、Netflixでしょうか)。
まとめ
精神科の当直バイトは基本的に暇で寝当直だが、必ず回診をする決まりになっている。
また
- 拘束回診
- 隔離回診
という特殊な回診が存在する。
相場は1コマ4〜6万円程度。実働2時間程度。
注意点としては
- 精神保健指定医のバックアップがあるかを確認
- 病院ごとのローカルルールに差が大きい
事が挙げられる。
必要物品は、シャンプーと時間つぶしの道具くらい。